地球滅亡の日(その6) 桂小南の「三十石」

ちりとてちん」徹底解剖ブログの
棹尾(とうび = 最後)を飾る 超大型企画!


地球滅亡の日、
遠藤マメ太郎は、どの落語を聴きながら、
四枚落ち(飛車・角・香車)にての
プロ将棋棋士との 対戦成績
1勝2敗(2008年3月現在)にて、
その生涯を 終えようとするか!
→ 地球滅亡の日、「寿限無」を聴くか? - 「ちりとてちん」徹底解剖ブログ


もう、どれくらい前のことになりましょうか。
いたいけな お子ちゃまだったマメ太郎が、
道を歩いていたら、
突然、すれ違った高校生に
とび蹴りを くらわすマネされたことがあります。


「なぜだろう?」
あまりに かわゆい厚顔の
いや違った 紅顔の お坊ちゃんやったから、
からかってやろうかと イタズラしたのでしょうか。


その謎を 解明するために、
再び、ロス市警から、
あのゲストを お呼びしましょう。


…………………………………………


いやぁ、腑におちませんなぁ。


(いきなり脱線ですが、ロス市警の この刑事。「腑におちない」とか、「やっこさん」とか。じつに、いいですねぇ。「翻訳:額田やえ子」)


でも、かならず犯人の動機を解明しますからね。
おっと、ところで、
マメ太郎さん、
あなた、落語が お好きなんですってね。
いやぁ、アタシも 桂吉弥さんに
愛宕山」を 個人レッスン つけてもらってたんですよ。


マメさん、おたくは、どなたかにお稽古を?
独学?
カセットテープで?
それで、それを繰り返し……。
風呂につかってる時とか、
往来(道) 歩いている時に、
喋ってる。
ほ、ほっほぉ。


つかぬこと うかがいますがね。
犯行当時、マメさん、
あなた 何か、落語、喋ってませんでしたか?
思い出して下さい。
重要な 手がかりになるかも 知れないんです。


桂小南の「三十石」?
ああ、あの。
それで、どのあたりを喋ってました?


船に乗る前に、
人別帳を 書くために、
おのおのが、名前をなのるところねぇ。


わかりました。
マメさん、あたなこそ、
あの犯行をうみだした 真犯人です。
あなたは、気づいていないでしょうけど。


…………………………………………


「三十石」ゆうのは、船のことです。
正式には、「三十石船」と ゆいます。
京都から大阪を、淀川水系にそって、
ゆったりと運航する 船のことでして。


落語「三十石」は、
旅人の土産物買いや、
狭い船中での 押し合いへし合い、
船頭と 岸から呼びかける商売女との 掛け合いを
オムニバス形式で、再現する1席でございます。


で。
マメ太郎が、道を歩きながら、
ブツブツゆうとった場面は、
チェックインのため、
乗船名簿用に 住所と名前をなのる
笑わせどころ でございまして。


みんな、
西郷隆盛の弟とか、
武蔵坊弁慶とか、
ヘソの出左衛門(でざえもん)
山坂 転ん太(やまさか・ころんだ)などなど
ええ加減なこと ゆうて
帳面つける番頭さんを、なぶっとります。


お婆ちゃんとて、例外ではなく
「みずからは、小野小町(おのの・こまち)」


絶世の美女である 平安レイディと名乗るのですが、
すかさず、番頭は、
「なにが、みずから じゃ。塩辛みたいな顔して」
と、切り返します。
みずから → しおから
という小ネタなのですが。


ここ、
ここ、
ココ山岡
とび蹴り危機一髪の瞬間、
まさに、ここを マメ少年は、喋ってたんです。


「自らは、小野小町
「なにが、自らじゃ。塩辛みたいな顔して」


そう!
歩いてくる 高校生の視点で再現しましょう。
向こうから、子どもが歩いてくる。
で、すれ違いざまに、
その つぶれ大福みたいな
年端もゆかない 子どもが、ですね
突然、
「塩辛みたいな 顔して」。


自分にゆわれたと勘違いして、
「なんや こいつ」思うて、
蹴ったろか、ゆうマネしはったんですな。


今、明かされる 驚愕の事実。
いやぁ、汗顔のきわみ。
すまんこってす。
堪忍してくださいぃ。


とゆうわけで。
そのお兄さん、いま 何してはるんでしょう?
函館で、イカの塩辛つくってらっしゃったら、
「ちりとて」みたいな
ええドラマが、作れそうですね。
↑ 作れん、作れん。


かくほど さように。
年端もゆかぬ つぶれ大福が、
小学校への行きかえりにも、
ネタを 繰ってった(← って、落語家やないやろ)
落語「三十石」。


米朝さんのも、ええのですが、
やっぱ、地球滅亡の日には、
幼き記憶が 懐かしい
桂小南さんので、聴きとうおますな。
そこで、第5位にランクインです。


さいわい、カセットテープ盤とは異なりますが、
「落語名人選」CDシリーズ(ポリドール)にて、
できの良い1席が、収録されてます。

NHK落語名人選(73) 二代目 桂小南 三十石・りんきの独楽

NHK落語名人選(73) 二代目 桂小南 三十石・りんきの独楽


小南さんは、大正9年、京都の山村の生まれ。
東京に ゆかりがあったためか、
テレビ、ラジオにて、
関西弁での落語を聴くことができた
数少ない落語家でした。


上方落語には、
ハメもの(途中から鳴り物が入る)ゆうのんが、
あるのを知ったのも、小南さんでした。
しっかし、まぁ、
最初に ハメもの聴いた時には、
驚いたのなんのって。


1996年、享年77で 亡くなりましたが、
関西に縁もゆかりもない 落語ファンを、
上方落語の とば口に いざなってくれたという点で、
とっても功績のある お一人と、
感謝しております。


ところで、


● 姫買いと 米買いと 一緒にすな
● 器量が悪うても 色が白ければ 肌もええ


など、
リビドーにまつわる
スンバらしき 表現も
あまた ございますが。


まだ、
「11PM 」や
平凡パンチ」でさえも、
存在だに 知らなかった
つぶれ大福(推定7、8歳?)が、
どれくらい理解して
喋ってたかと ゆえば。


そこは、やはり動物的本能です。
子供ごころ にも、
直感で、
「あ、これは、よくない世界だな」
「みんなの前でやったら、たしなめられる」。
そうゆうところは、ちゃーんと、カットして、
「塩辛みたいな顔して」みたいな
他愛ない語り場のみを、さらっていたのです。


小南さんと ゆえば、もう1席。
「お化け長屋」を、所望。
生意気な間借り人を 脅かそうとするシーンで、出てくる
モンモンモンモン」という オノマトペ(擬態語)。
ありゃ、ええわ。
残念ながら、小南さんの現役CDは少なくて、
「お化け長屋」も ありません。