首吊りのはてに、死霊の盆踊り


本日、四草くん(加藤虎ノ介)が お稽古してはりました
「算段の平兵衛」は、
マメ太郎も、だ〜い好きな上方落語です。


もう2ヶ月も前
ドラマ「ちりとて」に、はじめてこの演目が出てきた折、
ストーリーを説明された若狭(貫地谷しほり)が、
「そんな陰惨な話、笑えるんですか?」と
目を丸くしておりましたが、
笑えるんです(キッパリ)。


とはいえ、若狭のご心配も ごもっとも。
実際に。「桂枝雀のらくご案内」(ちくま文庫)によるとですね。

桂枝雀のらくご案内―枝雀と61人の仲間 (ちくま文庫)

桂枝雀のらくご案内―枝雀と61人の仲間 (ちくま文庫)

師匠の米朝さんが、
団体鑑賞会で「算段の平兵衛」をかけようとして、
主催者に 断られたことが あったそうです。
死体を持ち遊びにしたり、悪事がさかえるちゅうところが
お気に召さなかったそうなのですが、
枝雀さんの文章を引用しますと、(一部省略)


…………………………
この程度のことが許容できない方は 
落語をお聞きにならないほうがいいでしょう。
死体にしましても、これは完全に小道具でして、
その小道具がうまいこと
まわりまわっていく おかしさなんですね。
「悪事がうまくいく」という点は、
「善」にせよ「悪」にせよ、
ことがトントンと運ぶという快感を
味わっていただかなければ
いけないのです。
……………………………………………………


ストーリーが、あっちコロコロ、こっちコロコロと
めまぐるしく展開する 落語ですから、
ストーリー説明は、自粛して。
ちょっと 中原中也っぽく ポエティックに ふんわり、と。


遊び人、庄屋さんの愛人、夫婦局(つつもたせ)
心臓発作、正妻の焼きもち、首吊り偽装、死霊の盆踊り
崖からゴロゴロ、50両の大金……


詩情 あふれてますでしょ。


推薦ディスクですが。
やはり桂米朝さんに とどめを刺すと思いますけど。
ホンマのことゆうと、
米朝さんのしか、持ってません。
枝雀さんは、持ちネタ60席には あげていたのですが、
現役CDは、なし。
もう20年も前の「桂枝雀 独演会」というシリーズでは、
あったのです。ただし、カセットテープ。
だから、買わずにいてましたのですが。
買っておいたら、良かった。
後悔、先に立たず。
枝雀の「平兵衛」、聴きた〜い。
東芝EMIさま、ぜひぜひ、復刻CD化を!


桂米朝・盤には、注意点が、ひとつだけあります。


バラ売りしてはる「米朝落語全集」シリーズでは、
この演目、途中までしか やってません。
かといって、価値が薄れるかといえば、さにあらず。
じゅうぶん面白いし、かえって後半を切った方が、
すっきりするかも知れません。
[rakuten:rakugo:685179:detail]


サゲまで やってますのは、
LP盤を、CD化した
10枚セット組の「上方落語大全集」第1期になります。
[rakuten:toemifc:10000533:detail]


いづれにせよ。堂々たるピカレスク・ロマンです。
ぼかぁ、こ〜ゆ〜噺、好きだなぁ。
ドラマにすんなら、主演は、佐藤浩一かな。
正妻は、和久井映見(老け役も、できるはずだ)。
おめかけさん役は、若村麻由美で、ほぼ決定。


桂米朝「算段の平兵衛」のオススメ度(☆5つが満点。★は、0.5点)
ストーリー  ☆☆☆☆★
爆笑度    ☆☆☆☆
初心者向き  ☆☆☆☆★


最後の最後に、もうひとつ。
平兵衛が、隣村に、庄屋さんの死体処分を持ちかけられ、
正妻の目の前で、偽装するくだり。
これが、よう、理解できません。
そんな 手のこんだことせんと、
正妻に 因果を言い含めれば、済むことじゃないのかなぁ。
ゆえに、この整合性に疑問ありで、
ストーリーは、0.5点 減点。