大阪落語の 「大恩人」


18週目のラストにて、
草若師匠(渡瀬恒彦)の ひと言がきっかけで、
若狭(貫地谷しほり)は、オリジナル落語を
手がけることになるわけですが。


いわゆる新作落語って、どないしてできるんか。
まぁ、昭和の場合ですけど、
「ビクター落語 上方篇」シリーズの
初代・橘ノ圓都 「けつね」は、

橘ノ圓都(初代)(1)

橘ノ圓都(初代)(1)

そんな新作落語の成立について、
「へぇ」「な〜るほど」と得心させてくれる
とても、貴重なディスクでございます。


● 橘ノ 圓都(たちばなの・えんと)
  明治16年〜昭和47年。享年89。


持ちネタの豊富さで知られ、
桂米朝さんや 桂枝雀さんに、
珍しい上方落語を、伝授しました。


自分の弟子でもない落語家に、
秘伝の芸を 惜しげもなく伝える美徳は、
ちりとてちん」ファンなら、
先刻、ご承知でしょう。


枝雀さんは、口演・対談集
『らくご DE 枝雀』(ちくま文庫)にて、


「今(平成5年当時)の
 中堅とよばれる連中より上の世代は、みなと言うてええほど
 この師匠(圓都さん)から ネタいただいてます。
 大阪落語を伝えてくれはった 大恩人ですわ」


と述べています
(250〜251ページ。カッコ内は、マメ太郎の補足)。


そんな圓都さんが、昭和20年代に手がけた
新作落語が「けつね」。
もぴろん、「狐」のことです。
先を急ぐお侍が、若い娘のかっこうをした狐に、
とんでもない相談を持ちかけられ……。
江戸時代版「星新一の世界」みたいな
ストーリーです。


「けつね」は、自作ではなく、
別の脚本家が こしらえた新作落語です。
もう半世紀も前の大阪で、
紙にかかれただけの台本が、
どんな経緯をへて
高座でかたる 1席の落語に仕立てられたかを、
全27分間のうち、8分近くもかけて、
こと細かに、回想してはります。


橘ノ圓都「けつね」のオススメ度(☆5つが満点。★は0.5点)
ストーリー      ☆☆☆★
歴史的証言度   ☆☆☆☆☆
初心者向き      ☆☆☆