ノドが鳴る はや死にかかる


第15週は、「出る杭(くい)は 浮かれる」ざんした。
ところで、元の諺(ことわざ)の「出る杭は、打たれる」には
続きがあるって、知ってます?


「出る杭は、打たれる」
     ↓
「打たれた杭は、また出る」


人間、このくらいのガッツをもって
ことに当たらなアカンという意味だそうです。
あっ、こんなん国語のテストで書いちゃダメですよ。


家出した若狭(貫地谷しほり)は、小次郎さん(京本政樹)んちに、
お父ちゃんとケンカしたお母ちゃん(和久井映見)は、魚屋食堂に、
そして。草々(青木崇高)は、なぜか小浜の和田家に。
トリプル家出という展開になりましたです。


お互い、嫌いあってるからではなく、
ちょっとした ことばの行き違いですね。
ことばは、よう吟味して 使わなあきません。


落語には、わざと ヤーな ことばづかいして、
怒らせようという デビルくんがおります。
「けんげしゃ茶屋」も、
そんな連中が、跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する 1席。
「けんげしゃ」とは、縁起かつぎのことです。


時は、正月。
善良な一家が 平穏に 新春を祝うていると、
いっちょうブチこわしにしてやろうという
連中が、乱入するのです。


マメ太郎、この噺、好きでんねん。
一銭のトクにもならんのに、
他人の困った顔がみたいという一心で、
しょーもないことに、命をかける。


でも、落とし穴ほるとか、
むやみに、忌みことばを連発するなんて、
あらっぽい 急ぎばたらき では、ダメダメ。
たとえば、だす。


とっても 縁起を かつぐ
林松右衛門(はやし・まつえもん)さんが、ですね。
めでたい正月の 床の間に、
こんな祝歌を、飾っております。

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● のどかなる はやしに かかる まつえもん
     ↓
● のどかなる 林にかかる 松右衛門


大意: のどかな松林のように
    今年の松右衛門さんも、
    平穏な1年をおくるであろう →(※ 注)
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お名前の「はやし まつえもん」を、めでたく読みこんでいるわけです。
これを、ですね


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● のどか なる はやしに かかる まつえもん
        ↓
● のどがなる はや しにかかる 松右衛門
        ↓
● ノドが鳴る 早 死にかかる 松右衛門


大意: ノドからウウーっとうめき声をだし
    哀れ 松右衛門は、もうすぐ死にそうだ
…………………………………………

江戸時代は、濁点を表記しませんから、
「のどか」 → 「のどが」 は、OKよ。


まさに、釣れば釣るほど安くなる「3段 逆スライド方式」。
地獄へ向かってホップ・ステップ・ジャンプの直滑降。
こんなふうに、エレガントに逆なでするのです。


こんなんが、惜しげもなく ポンポンと飛び出す
「特選 米朝落語全集」盤(東芝EMI)を聴くと、
笑いを通りこして、脱帽の境地に いたりますですよ。
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桂米朝「けんげしゃ茶屋」のオススメ度(☆5つが満点。★は0.5点)
ストーリー   ☆☆☆☆★
爆笑度     ☆☆☆☆
初心者向き   ☆☆☆★



明日からの16週目は、「人のふり見て 我が塗り直せ」。
小浜篇に なりましょうか。
順ちゃんロマンスが あるみたいですね。
ヒロシ( & キーボー?)も でてくるよーですし、
夫婦和合を説く落語も ありそうで。



※(注) 祝歌の大意ですが。
「のどかなる林に かかる松枝 門」として、

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のどかなる林を、何気なく散策していたら、
このように 立派な枝ぶりの松を いただく
門がまえの 立派な邸宅があった
(なんという 趣味の良い住まいであろうか)
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とゆーふーにも、読みとれます。