落語をやりたいのか? 落語家になりたいんか?


2007年11月27日(火)の第50回『ちりとてちん』。
1993年(平成5年)の松もとれて、いよいよB子(貫地谷しほり)も正式に内弟子に。


ところが、朝から晩まで炊事・洗濯・掃除におわれ、これでは落語家になったんか、お手伝いになったのか、わかりません。

やさしい言葉をかけてくれはるのは、B子に気がある小草若(茂山宗彦)だけ。草原にいさん(桂吉弥)も草々(青木崇高)も、厳しいあに弟子(あにでし)になってしまいました。


本日は、またもやA子との再会が!
小草若のカバン持ちとして同道したテレビ局でばったり。一日中家事におわれる自分と、スタジオでスポットライトを浴びるA子(髪なんかアップにしちゃって)とを見比べて、またもや、生来のひがみ根性がムクムクと頭をもたげて参ります。


テレビ局から帰るなり、思い余って草若(渡瀬恒彦)に、
「落語の稽古をつけて下さい」
しかし師匠は、「稽古なら、しとるやないか」。← ここが今週のポイントでんな


縁側でぼうぜんとたたずむA子に、草原にいさんは、

「お前は、落語をやりたいんか? それとも落語家になりたいんか? 落語をやりたいだけなら、趣味でやっとけ。落語家というものは、人を喜ばしてなんぼの商売。ごはん作ったり、家の中をきれいにして、人を喜ばすことがでけんで、なにが落語家か」

こう一喝します。← ここもポイントでんな


落語家において、お稽古もつけてもらえないご奉公の期間がいかに大切か。
ざっと列挙いたしますと。


・ 忍耐をまなぶ
「目の前のことをできないヤツに、大きな夢を語る資格はない」というわけです。(←どっかで聴いたことあんねんなぁ思ったら、そうだ! 日本テレビ系のテレビドラマ『バンビ〜ノ』で、主人公バン(松本潤)に、先輩シェフ(佐々木蔵之介)が鋭く放った名セリフでした)


・ 真実は細部に宿る
大ネタでも45分間。短ければわずか10分間しか持ち時間のない落語においては、ささいな言いよどみや失敗でさえも、噺ぜんぶが台なしになります。それどころか、「やつは、あかん」という烙印(らくいん)まで押されかねません。ガラス拭き、炊飯の水かげんなど、ちょっとしたことにも細心の注意を払う心がけが、これ必要なのです。


・ 日常所作を身につける
落語の基本は、日々一般の動作。庭を掃くんでも、お茶いれるのでも、本来の動作を理解して。その上で、舞台上で効果的に見せる演出をほどこさなければ、「それらしい所作」は見えない。



若狭の実家では家事なんてやったこともなく。
しかも落語家の決まりごとを知らないB子が、こんなしきたりにどう折り合いをつけるのでしょうか?


ところで。
佐々木蔵之介
いい役者ですねぇ。実家は、京都の造り酒屋。それで神戸大学農学部(酒づくりの基本は、発酵ですから)を卒業した秀才なのですね。
ぜひとも『ちりとてちん』にも、京都嵐山の天才落語家などという役どころで見てみたいものです。


(最後に訂正とお詫び)
11月19日(月)の日記にて。桂米朝「本能寺」について、マクラで義太夫の三味線方が出てくるという記述をいたしました。
まっこと、すみません。同じ芝居噺の「猫の忠信」(ねこのただのぶ)と、頭の中でポーンと入れ替わっておりました。19日の日記は、そのままにして、改めて訂正文を入れさせていただきました。


明日28日(水)は、NHK衛星第二放送にて、午後7時45分から、米朝師匠の「百年目」です。