「愛宕山」での窮余の一策


人間、窮地に陥ったら、どんな手段でも考えつくもんや――。大根おろし対決で、B子が使ったのはハンドミキサー。これに感心した草原にいさんが説明してはった「愛宕山」のクライマックス、どんなんか、おわかりになりましたか? うどんすすってはったり、新聞片手に見ていた方に、ご説明いたしますと。

ざっと、こういうことです。


愛宕山にハイキングにでかけた旦那が、谷むこうの的(マト)めがけて素焼きの陶器を投げる「土器(かわらけ)投げ」に興じます。さらに余興とばかりに、土器(かわらけ)の代わりに放ったのは、なんと値打ちものの小判。的をそれて谷底へ落ち、これを拾おうと、幇間(たいこもち)の一八が下に飛び降ります。
しかし。上は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)、迂回路は狼が腹を空かせている、けもの道。戻るに戻れん。旦那には「欲をかくさかい、そうなるんや。狼にでも狐にでも食われてしまえ」とクサされる始末です。
しばし思案の一八。脱いだ着物を細く裂き、それを結わえて、一本の長ーーーいヒモをこしらえます。石を結わえた一方を、カウボーイみたいに崖から生えている竹めがけて投げ。うまくクルクルと巻きついたところで、もう一方を身体に縛りつけ。
ギュギュっとヒモをひっぱり、ぽーんと放したから、しなわった竹の反動で、一八の身体は宙たかく飛び上がり、もといた場所にストン。

という顛末でした。


では、オチは?
いやいや、こればっかりは、ホンマもんの落語で聴いてもらうまで、とっときましょう。語呂あわせではなく、ちゃーんと大作のラストをしめるにふさわしいオチです。