親子の情愛やねぇ


11月17日(土)の第42回「ちりとてちん」。
前半のクライマックスともいうべき回になりました。


徒然亭一門会の当日。トリをとるのは、3年の間、一門から離れていた小草若(茂山宗彦)。父であり師匠である草若(渡瀬恒彦)の十八番「愛宕山」(あたごやま)をかけるはずが、なぜか「親というものは、子どもにいい名前をつけたがるもので」。「寿限無」(じゅげむ)をかたりはじめた。

しかし自分のことを気づかってくれていた父への感謝の念がこみあげてきて、嗚咽と涙で、噺はボロボロ。ウォオオオオオと泣き出して、高座から駆け出した。客席は、シーン。「こりゃ、まずい」。二番弟子の草々(青木崇高)があらためて「愛宕山」を語らねばと覚悟を決めた、その瞬間!
おもむろに客席から立ちあがった師匠・草若が、紫の座布団に正座し、「愛宕山」を語りはじめた。

これにてB子(貫地谷しほり)の来阪編の序章が幕。いよいよ来週は、弟子入り志願となりそうです。

今週は、福井県小浜のB子一家が大阪にやってきました。「デパートの箸売り場を視察するんや」といいつつ、お父ちゃん(松重豊)が長期滞在する本当の理由は、B子の様子が心配だから。そば打ちをキビしく叩き込むお母ちゃん(和久井映見)も、「紀代美が憎くて言うてんやない」。
和田親子のスパイスがまぶされていたからこそ、今週の本丸・徒然亭親子の情愛が2倍にも3倍にも高められました。お見事!

あのぉ。一門会に、四草(加藤虎ノ介)が住みこんでいる中華料理店「延陽伯」の中国人店員がきていましたけどぉ。たしか日本語がさっぱりわからへんのではなかったのでは。


親子の情愛といえば。
近所で火事が発生! 屋根をつたい歩き、消火にあたった火消しの若者にお礼をしようと招いてみれば、しばらく前に勘当した息子。当の息子は、火元が実家に近いと心配して駆けつけたのだった。
江戸落語「火事息子」には、草若親子の設定と、ちょっと通じるところがあります。三遊亭円生林家正蔵(先代)、古今亭志ん朝などスタンダード盤としてオススメです。


なぜか愛着あるのが、桂三木助(先々代)の昭和34年ライブ録音盤CD(コロムビア)。淡々とした語り口ながら、子を思う親、親を思う子の気持ちがよーく伝わってくるから、でしょうか。

[rakuten:book:11738582:detail]

桂三木助「火事息子」のオススメ度(☆5つが満点。★は0.5点)
録音   ☆★
レア度  ☆☆☆☆★
初心者度 ☆★
(注意!) 音源が非常に芳しくありません。初めての1枚には向きません。


落語には、この他にも親子の情愛をうたった演目があります。またの機会にご紹介しましょう。(了)