便所に行ったら、誰か入っとる


昨日(2月21日)放送分で、
小浜における
ダブル和田家の近況が、紹介されてました。


正典(松重豊)さんちは、フリーター正平(橋本淳)が、
三代目を、継ぐような、継がないような。


秀臣(川平慈英)さんちは、
若狭塗箸製作所が、火の車。ボウボウ。
小浜観光協会の竹さん(渡辺正行)が、ゆうてました。


「今からやけど、
 跡取り息子が婿養子になって、
 奥さんが倒れて。
 あれが、ケチのつけはじめやったんか」


商売ゆうのは、むつかしいもんで、
ちょっとしたことが きっかけで、
ガラガラと、経営がかたむくんですね。
10年はともかく、
20年30年、続けるゆうのは、タイヘンどころやない。


落語にも ですね。
そんな商家の落日を 題材にした1席がございます。
「帯久」。おびきゅう、と読みますです。


ストーリー落語ですから、委細は伏せとくとして。
すごく、わかりやすいように、
一部、設定をかえて、ご紹介いたしますと。


すんごく繁昌している「せいゆう」(仮名)の すぐ近くに
地味な「じゃすこ」(仮名)というお店がございまして。
しかし、ちょっとしたことから、「せいゆう」は、経営不振に。
かわって、「じゃすこ」は、「いおん」(仮名)と名前をかえて大躍進。
「せいゆう」は、同業のよしみということで、
「じゃすこ」に 経営テコ入れのお願いに参りますが……。


このあと、東京地裁の名裁判長が ビュっと 登場するのですが。
この「せいゆう」(仮名)の凋落を 端的に表現したのが、
観光協会の竹さんが、いみじくも コボしてた


  弱り目に たたり目
  泣き面に 蜂
  貧すりゃ 鈍す
  ワラ打ちゃ 手ぇ打つ
  便所に行ったら 先に誰か入っとる


なのです。


「ワラ打ちゃ 手ぇ打つ」ゆうのは。
その昔、ワラ(=藁。わらしべ長者の「わら」ね)は、
おにぎりを包んだり、草履(ぞうり)にしたり、
うんこを拭いたりと 重宝していたわけです。
でも、あのガサガサしたままでは、使いものにならない。
そこで、トントンと 木槌(木でできたトンカチ)と叩くのです。
で、トントンしてたら、
誤って、自分の手を叩いちゃって、
「痛ぇ」と 間の悪さを 嘆くのでございます。


「便所に入ったら、誰か入っとる」ゆうのも、困ったちゃんですね。
似たようなケースに、繁華街を歩いてて、グルグルともようして、
デパートに入って、脂汗たらしながら、WCマークを見つけ、
ソロリソロリと へっぴり腰になりながら、
たどりつくと、看板が。
「掃除中」。



落語「帯久」に 戻りますと。
とっても良心的なお店「和泉屋」(実名)が、
ある一件をキッカケに、
ガタガタガタと 崩れ落ちて 参ります。


江戸落語での代表格は、三遊亭円生
「円生 百席」シリーズ(ソニー)のスタジオ録音です。

百席(7)帯久/お藤松五郎

百席(7)帯久/お藤松五郎

1時間、たっぷりと聴かせてくれます。


上方落語での代表格は、桂米朝
[rakuten:rakugo:685141:detail]
こちらも、46分間の長講1席でして。
先に挙げた 竹さんのセリフ


「弱り目に たたり目
 泣き面に 蜂
 貧すりゃ 鈍す
 ワラ打ちゃ 手ぇ打つ
 便所に行ったら 先に誰か入っとる」


まんま ございます。


とゆうより。このフレーズは、
落語における「間の悪い」「ついてない」シーンでの 常套句。
ドラマ「ちりとてちん」の方が、 
落語から、引用したって 寸法でさぁ。


「帯久」のオススメ度(☆5つが満点。★は、0.5点)
ストーリー  ☆☆☆☆★
人生訓度   ☆☆☆☆★    
初心者向き  ☆☆☆


ストーリーの起伏にとんだ「お店もの」(おたなもの)です。
ただ。ただ。
主人公の和泉屋さんは、まぁ、いい人なのですが。
甘〜い、甘〜い。
ハーゲンダッツの「クリームブリュレ」級に 甘い。
何度も聴いているうちに、どっちかってゆうと、
カタキ役の方に、感情移入しちゃうんだな。
だから、マイナス0.5点しましたが、
知名度の割には 隠れた「名作」じゃないでしょうか。