滝川を、鯉が昇る


先週、2007年の芸術祭賞(文化庁)が、発表になりました。
マメ太郎、とても嬉しかったのは、
演劇部門で、女優の加藤忍さんが、新人賞を受賞したこと。


主戦場が舞台ですので、実際に加藤忍(かとう・しのぶ)を
見たことのある方も少ないと思いますが。
東洋英和学院短期大学卒で、昭和48年生まれ。
NHKでも放送していた韓流ドラマ『春のワルツ』の
日本語吹き替え版のヒロインの声を担当していました。


彼女、「スゴい女優さんではないか」と、前々から、大注目していました。
舞台にひとたび立つと、別の生き物になりきれる。
たぶん、震度8の大地震が起きても、そのまま気づかずに
芝居を続けているんじゃないか。
それでいて、熱演一辺倒ではなくて、コメディをやらせたら天下一品。
芝居勘が、いいと申しましょうか。
現代日本で、もっとも芝居のうまい女優のひとりではないかと、
思っております。


加藤健一事務所」での舞台が多いのですが、
時折、地方公演もありますので、その際は、ぜひ。
念のため、加藤健一さんとは血縁はありません。



さてさて。「芸術祭賞」といえば。
平成8年に演芸部門の優秀賞に輝いたのが、
瀧川鯉昇(たきがわ・りしょう)・師匠です。


いい芸名でしょ。鯉が、滝川を昇る。
明治大学農学部卒の学士落語家で、
前名は、春風亭鯉昇。2年前に「瀧川」に改名されました。
昭和58年には、
ちりとてちん」にも出演中の桂よね吉さんが感涙にむせんだ
「NHK新人落語コンクール」の最優秀賞も受賞されています。


落語家らしい、落語家と申しましょうか。
江戸時代から生きているんじゃないかっていう、落ちつきぶり。
太いけれども、よーく通る声。
落語になじみのない方も、すぐに鯉昇ワールドに
引きこまれちゃいますよ。


落語配信サイト「SSweb」(エスエスウェブ)では、
ただいま、鯉昇ワールドを、5席アップしております。


時そば
・素人鰻
鰻屋
・肥がめ
・古新聞


上から4席の古典落語は、2008年2月29日までの
期間限定アップ。
時そばhttps://ssweb.ne.jp/Contents/03-r004-05-2.htmlは、これぞ、定番中の定番の古典落語。鯉昇師匠が、芸術祭賞の受賞対象となった演目が、この「時そば」でした。
「肥がめ」https://ssweb.ne.jp/Contents/03-r004-06-2.htmlは、11月14日のブログ → 居酒屋のステージに置かれた物体 - 「ちりとてちん」徹底解剖ブログ で紹介いたしました「祝いの壷」と同じ噺でございます。
すべて、ホンマもんの寄席で、ナマ収録した貴重なライブ音源です。お客さまが、腹を抱えて笑っている様子が、手にとるようにわかります。


アクセスは、こちらから、どーぞ → https://ssweb.ne.jp/

「貧乏 ヒマあり」地獄


2007年のラスト3。
12月26日(水)放送、第75回「ちりとてちん」。


天狗座での拍手喝采が認められ、
B子(貫地谷しほり)が、こらえてきた
3年間の内弟子修業も、除夜の鐘とともに、
年季明けすることになりました。


ところが。
アパートさがしに、まずはひと苦労。
家賃2万円では、ロクな物件がござりません。


おまけに。
あに弟子からは、「貧乏に、耐えな」と脅され。
奈津子さん(原沙知絵)からは、「貧乏はまだマシ。ヒマなのが」。
考える時間があればあるほど、
仕事がなかったらどうしよう、
いまさら実家には戻れないし、と、
悲観的マイナス思考に陥るのだと、
これまた脅されます。


夢に、「女流落語家、孤独な死」という
新聞記事が踊り、
ハっと目をさまします。
草々(青木崇高)に、
「このまま、ここで住むわけにはいきませんか」と
泣きつきますが、
「誰もが、一度は通る道や」と諭され。


想い出します、マメ太郎も。
18歳で、はじめてひとり暮らしを始めた時のことを。
翌朝、ハっと目覚めると、
まずトースターが目に飛びこんできました。
狭ーい部屋でしたので、枕元のすぐそばに
食器だの、台所用品だのが置いてあったのです。


「ああ、ひとり暮らしなんだ」
そう思うと……、胸にあついものがこみあげ、
思わず、ガッツポースをとりました。


風呂なし、電話なし、
共同台所に共同便所にして、
怠惰で単調な ひとり暮らしでしたが、
いやぁ、懐かしいなぁ。


とまぁ、こう言えるのも、
歳月が、すべてを美化させてくれるからで。
心細かった気持ちが、
どこかにあったんじゃないかと
思います。たぶん。


でも。
「ウキウキ気分」と「トホホ気分」の割合は、
うーん、やっぱり、
「94 : 6」 だな。